国土交通省の所管する[公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター]の発表によると、住まいの不具合相談において、「雨漏り」の相談件数は、リフォームの中では最も多く、新築では2番目に多いという結果となっております。
多くの方を悩ませている雨漏りですが、悩んでいる方が多いわりに、“実際に雨漏りが発生したときにどう対処すべきか”についてはあまり知られていおりません。その理由は、おそらく「◎◎したら雨漏りが解決した」といった画期的な雨漏り対処法が存在しないためでしょう。一口に雨漏りといっても原因はそれぞれ異なるため、その対処法もバラバラ。雨漏りは、専門家でなければ解決が非常に難しい住まいトラブルなのです。
しかしながら、どうすればいいかわからないからといって雨漏りをそのままにするのは、もちろんいけません。また、専門家に任せきりにするというのも、一抹の不安が残る方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、今回のブログでは、専門性の高い雨漏りについて、素人の方にもわかりやすく噛み砕いて解説してまいります。「雨漏りを解決するにあたり、道しるべとなる考え方」や「雨漏りが発生したときに頼れる業者の選び方」、「雨漏りを補修するのにかかる費用相場」など、知っておきたい、知っておくと役立つ雨漏りの情報をご紹介します。雨漏りでお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
1.雨漏りは発生原因を突き止めることから考える
雨漏りが発生したときは、何よりもまず発生原因を突き止めることを第一に考えましょう。
ひとまず目の前の雨漏りを、いち早く止めたいという方は、「5.早急に雨漏りを止めたいなら応急処置で対応すべし」をご覧ください。
1-1.雨漏りを止めるためには、発生原因の究明が絶対
雨漏りを止めるために最も重要なことは、雨漏りの発生原因を突き止めることです。実は、雨漏りは発生原因さえ突き止められれば、ほぼ解決したも同然と言っても過言ではありません。
しかし、この“雨漏りの発生原因”を突き止めるのが、非常に難しいのです。
事実、補修をした業者が雨漏りの発生原因を見誤ったがために「雨漏り補修をした後、すぐに雨漏りが再発した」というトラブルは跡を絶ちません。
それでは、雨漏りの発生原因を正確に突き止めるには、どのようにすればよいのでしょうか。
1-2.業者の”調査”を活用して発生原因を突き止めるべし
雨漏りの発生原因は、一般的に”雨漏りの調査”を行なって突き止めていきます。
雨漏りの調査は、業者に依頼するのが鉄則。プロでも見誤る雨漏りの発生原因。素人が自身で突き止めるのは、まず無理と考えていただいて間違いありません。
雨漏りの調査では、雨水の浸入箇所と、漏水箇所を特定することが重要となります。下記、主な雨漏り調査の方法です。
[主な雨漏り調査の方法]
調査方法 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
目視調査 | 読んで字のごとく、”目で視(見)て”調査する方法です。一目で確認できる箇所だけでなく、屋根の上や天井裏などの普段見えない箇所まで丁寧にチェックしていきます。 | 無料~3万円程度 |
散水調査 | 雨水が浸入していると思われる箇所に水をかけて、雨漏りを再現し、雨漏り箇所を特定する方法です。 | 3万円~18万円程度 |
赤外線サーモグラフィ―調査 |
高感度赤外線カメラで住まいを撮影し、温度で雨漏り箇所を調査する方法です。水の浸入箇所や滞留箇所は温度が下がるため、雨漏り箇所を突き止めることができます。 | 15万円~35万円程度 |
発光液調査 | 雨水の浸入の疑いがある箇所に検査液を流し込みます。雨漏り箇所が複数ある場合には、色の違う検査液を使用することで、雨水の浸入箇所と、漏水箇所がひと目でわかります。 | 10万円~25万円程度 |
※費用相場はあくまでも目安です。詳細な費用は、各業者にお問い合わせください。
どの調査方法を選択するのが良いかは、雨漏りの状況等によっても異なります。雨漏り調査にかける予算等を踏まえて、業者と相談しましょう。
1-3.[補足] 雨漏りを放っておくと、加速度的に住まいの腐敗が進む
雨漏りが、”自然と止まる”ことは、まずありません。仮に「一回だけ雨漏りをしたことがあったけど、それ以来、特に雨漏りしている様子はない」という場合も、目に見えるところで発生していないだけで、どこかで雨漏りは生じている可能性が高いと考えるのが賢明です。
そして、雨漏りは生活に支障をきたすだけでなく、発生し続けることで住まいを少しずつ蝕んでいってしまいます。
具体的には、住まいの内部に入り込んだ水は次第に躯体を腐食させ、住まいの寿命を縮めていきます。場合によっては喘息やアトピー、アレルギー性気管支炎アスペルギルス症(ABPA)などを引き起こす原因となるカビや菌を発生させてしまうこともあります。
雨漏りの発生を確認できたときには、迅速に補修することを考えましょう。補修するにあたり、まずは雨漏りの発生原因を突き止めることが重要となるのは、上記の章で述べた通りです。
2.頼るべき業者を見つけるために知っておきたい2つのこと
雨漏りの発生原因を突き止めるにも、雨漏り補修をするにも、いづれにしても業者に頼る必要があります。
「どんな業者なら信頼できるのか」というのは、気になるポイントでしょう。そこで、ここでは信頼できる業者を選ぶ際に知っておくべき3つのことをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
2-1. 絶対に確認しておきたい雨漏り補修の実績
雨漏り補修は、さまざまなリフォーム工事のなかでも、特に専門性が求められる難易度の高い工事になります。そのため、確実に雨漏りを止めるためには、確かな知識や技術をもった業者に工事を依頼することが重要となります。
では、確かな知識や技術をもった業者かどうかを、どのようにして見極めればいいかというと、雨漏り補修の実績数をチェックするのがオススメです。数がすべてというわけではありませんが、やはり実績が豊富にある業者の方が、知識の面でも技術の面でも、より安心であることは間違いありません。
2-2.持っていると、より安心な専門資格「雨漏り診断士」「外装劣化診断士」
業者を選ぶ際に、一つの指標となるのが、「雨漏り診断士」「外装劣化診断士」という資格。
雨漏り診断士は、特定非営利活動法人 雨漏り診断士協会が認めた雨漏り診断のプロ。雨漏りに関して豊富な知識を持ちあわせています。外装劣化診断士は、一般社団法人 住宅保全推進協会が認めた建物診断のプロ。住まいの屋根・外壁などの外装部分の劣化状況を正しく見極める知識を有しています。
雨漏りの調査をするのに必ずしも資格が必要というわけではありませんが、資格の有無は、業者のレベルを見極める一つの判断材料としてわかりやすいです。
プロタイムズでも外装劣化診断士による建物診断を無料で実施しております。
2-3.[補足] 築10年未満の新築の場合、売主に相談するのが正解
品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、新築の住宅瑕疵担保責任保険*の期間は10年と定められています。
平たく言うと、引き渡しから10年以内で、かつ新築住宅であれば、売主に雨漏り補修をする責任があり、補修費用も売主が負担しなければならないということです。
引き渡しから10年以内で、かつ新築住宅で雨漏りが発生した場合には、売主に補修を依頼しましょう。
*住宅瑕疵担保責任保険とは
新築住宅に瑕疵(欠点・欠陥)が見つかった場合に、その補修費用をまかなう保険のこと。
賃貸で雨漏りが発生したときは、どうすればいいの?
賃貸の住宅やマンション、アパート等で雨漏りが発生した場合には、管理会社や大家さんに相談しましょう。住まいを貸している貸主(管理会社や大家さんなど)は、民法600条により、“借主が適切な状態で住まいを使用できるよう、何らかの欠陥がある場合には修繕すること”が義務づけられています。そのため、雨漏りが発生した場合にも、基本的に補修の責任は貸主である管理会社や大家さんなどが負うことになります。
3.雨漏り補修にかかる費用相場
雨漏りの補修費用は、進行具合や補修箇所、補修内容によって大幅に異なるため、一概にいくらと言い切ることはできません。詳細な費用は業者に雨漏りの状況を診てもらい、見積りを算出してもらいましょう。
下記、補修工事別の費用相場をまとめておりますので、参考情報としてご活用ください。
<工事内容別!雨漏り補修の費用相場>
補修工事の内容 | 費用相場 |
---|---|
ひび割れ補修(シーリング補修) | 5万円~ |
ひび割れ補修(シーリング補修)+外壁塗装 | 100万円~ |
外壁|重ね張り*¹ | 150万円~ |
外壁|張り替え*² | 200万円~ |
屋根|重ね葺き*³ | 80万円~ |
屋根|葺き替え*⁴ | 100万円~ |
*1 重ね張り:既存の外壁の上に、新しい外壁材を施工する工法
*2 張り替え:既存の外壁を取り除き、新しい外壁材を施工する工法
*3 重ね葺き:既存の屋根をそのまま残し、その上に屋根材をかぶせる工法
*4 葺き替え:古い屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材に替える工法
※その他にも、防水シートの補修や瓦の交換など、雨漏りの発生原因によって、さまざまな補修工事が考えられます。
トラブル事例4選
ここでは、よくある雨漏りトラブルの事例と、その対処法をご紹介します。現在、抱えている雨漏りトラブルと似た事例があれば、ぜひ対処法も参考にしてみてください。
4-1.何度、補修をしても雨漏りが再発してしまう
よくある雨漏りトラブルが、雨漏りが止まらず何度も補修を繰り返しているケース。
基本的には、補修後に雨漏りが再発した場合、再度、同じ業者に補修を依頼しましょう。リフォーム瑕疵保険期間内か、もしくは業者の保証期間内であれば、業者には再度補修をする責任があります。新築で瑕疵担保責任保険の保証期間内の場合には、再度、売主に補修を依頼してください。
ただし、”補修後に雨漏りが再発する”という事態が何度も続いている場合には、雨漏りの発生箇所や補修方法を見誤っている可能性があるため、一度、第三者の建築士等に診てもらうというのも考えなければなりません。第三者の建築士等に診てもらった結果を踏まえて、業者と相談することで、解決の糸口が見えることもあります。
4-2.中古住宅を購入後、すぐに雨漏りが発生
中古住宅の場合、新築とは異なり、保証期間が一様に設定されているわけではありません。そのため、まずは売買契約時に交わした瑕疵の保証期間を確認する必要があります。
傾向としては、売主が宅建業者の場合は2年ほどの保証となっていることが多いようです。宅建業者の仲介で、個人が売主となっている場合は、保証がついていないこともあります。そして、保証期間内であれば、原則、売主に補修を求めることになります。
ただし、中古住宅を購入する前から雨漏りが発生しており、売主がそのことを伝えていなかった場合には、民法572条により、保証の有無にかかわらず、買主は売買契約の解除もしくは損害賠償を請求することができます。
4-3.瑕疵保険を請求したいが、家を建てた業者が倒産してしまった
家を建てた業者が倒産しても、瑕疵保険を請求することは可能です。
この場合、請求は、保険法人に自身で直接行ないます。保険法人は国土交通大臣が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人」のいずれかになりますので、引き渡し時に受け取った書類にて確認してください。保険法人によって瑕疵の調査が行なわれ、必要な費用が支払われることになります。
※詳細はこちら(消費者を守るしくみ>保険金の請求について)からご確認ください。
4-4.太陽光パネルを取り付けてから雨漏りが発生
太陽光パネルの設置によって、雨漏りが発生することがあります。そして、太陽光パネルの設置が原因で雨漏りが発生した場合、保証期間中は、太陽光パネルを設置した施工業者に補修の責任が生じます。
太陽光パネルの設置が原因での雨漏りトラブルにおいて、よく争点となるのは、「雨漏りの発生原因が、太陽光パネルにあるかどうか」です。そのため、太陽光パネルを設置した施工業者に補修を依頼するには、まずは、雨漏りの発生原因を明らかにすることが必要です。
また、太陽光パネルの製品によってはメーカー保証のついているものもありますので、あわせて確認しておきましょう。
[参考] 国土交通省は、太陽光発電パネルの設置工事基準を策定しています。詳細はこちらからご確認ください。
4-5.[補足] 解決の糸口が見えない雨漏りトラブルは、第三者機関に相談を
「業者と揉めてしまった」「トラブル内容の専門性が高く、自身ではどうすればいいかわからない」など、解決の糸口が見えずに悩んだときには、第三者機関に相談するのがオススメです。
特に、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの『住まいるダイヤル』は住宅専門の相談窓口となりますので、より専門的なアドバイスが受けられます。
■公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの『住まいるダイヤル』
国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の相談窓口
■消費生活センター
消費生活全般に関する苦情や問い合わせの窓口
■弁護士会(各地域ごと)
5.早急に雨漏りを止めたいなら応急処置で対応すべし
「ひとまず、この長雨の期間をしのぐ方法がしりたい」「業者に依頼する前に、雨漏りが進行するのを防ぎたい」という場合には、応急処置がオススメです。応急処置を施しておけば、雨漏りの被害がそれ以上に深刻化するのを一時的に防ぐことができます。
下記にご紹介する応急処置は、素人にも簡単にできます。
[応急処置①]
防水シートで雨水をブロック!
■準備物:ブルーシート
雨漏りの発生原因が明確にわからなくても、雨水が浸入している疑いのある箇所を覆うことで、一時的に雨水を住まい内部に入れるのを防ぐことができます。古典的な手法ですが、効果は抜群です。
この時ブルーシートが浮いていたり、風にあおられたりしては意味がないため、屋根や壁に沿ってきちんと留めるのが重要なポイントです。
[応急処置➁]
雨水の浸入口を防水テープで防ぐ
■準備物:防水テープ
防水テープでの応急処置は、雨漏りの浸入箇所がわかっているときに有効です。雨水の浸入箇所に防水テープを貼るだけの簡単作業。
[注意] 応急処置は急場をしのぐための間に合わせ!きちんとした補修は絶対に必要!
仮に応急処置で雨漏りが止まっても、きちんと補修ができているわけではないため、いずれは再発します。応急処置は、あくまで一時的な処置。住まいのことを考えると、できるだけ早く補修するのが賢明です。
6.[参考Ⅰ] 多くの雨漏りは見えないところで発生している
“雨漏り”というと、ポタポタと天井から水が落ちてきている、室内に雨染みができている、といったイメージをお持ちの方も多いと思います。
しかし、雨漏りが必ずしも見えるところで発生するとは限りません。むしろ、見えないところで発生している雨漏りのほうがほとんどといった方が正解かもしれません。見えるところで発生している雨漏りの多くは、かなり進行しているケース。進行途中の雨漏りは、屋根裏などの見えないところで人知れず進行しているのです。
例えばどこからか「ポタポタと音がする」「外壁にひび割れがある」「屋根の劣化具合をしばらく確認していない」「雨が降った後、室内がカビ臭くなる」といった場合は、雨漏りが発生している可能性もあります。思い当たる症状がある場合には、一度、雨漏り調査だけでも受けてみることをオススメいたします。
雨漏りの疑いのある住まいの劣化症状は、下記の「7.[補足Ⅱ] 雨漏り被害を最小限に!知って得する情報まとめ」でご紹介します。
7.[参考Ⅱ] 被害を最小限に!雨漏りを引き起こす住まいの劣化症状まとめ
雨漏りを放っておくと、住まいはどんどん劣化していきます。そこで、住まいを守るためには、いち早く雨漏りを見つけ、対処することが重要となります。
この章では、雨漏りにいち早く気づくために、雨漏りを引き起こす可能性のある住まいの劣化症状をご紹介します。下記の劣化症状が一つでもある場合、気が付かないうちに雨漏りが発生しているかもしれません。
<雨漏りを引き起こす可能性のある住まいの劣化症状>
劣化症状 | |
---|---|
屋根材の割れ |
屋根材のズレ |
シーリングの割れ |
シーリングの剥がれ |
ひび割れ(0.3mm以上) |
欠けている箇所がある |
ベランダのひび割れ |
樋の割れ |
気になる症状がある場合には、業者に雨漏り調査を依頼し、雨漏りの発生有無を確認してもらいましょう。
まとめ
住まいを長く大切にするためには、雨漏りを迅速かつ、確実に止めることが重要です。
現在、雨漏りが発生している場合には、イチ早く業者に雨漏り調査を依頼し、雨漏りの発生原因を突き止め、補修を行ないましょう。また、明確に雨漏りしているかどうかはわからなくても「もしかして雨漏り?」と思い当たることがある場合にも、早めに雨漏り調査を実施するのがオススメです。